インターネット通信のしくみ ② TCP/IP の概観

インターネット通信のしくみ ② TCP/IP の概観

インターネットの根幹の概念、TCP/IP について見ていきます。
WAN の全体像の話から、WAN への無線接続の流れの話をしていきます。

今回も扱っていく Web ページの URL は
https://hekatimebox.main.jp/wordpress/2024/02/network-1/
です。前回のページの URL です。

ここではマイクさんがアメリカのニューヨークに住んでいて、
ニューヨークの自宅からこのページにアクセスする場合を見ていきます。

マイクさんはニューヨークの自宅の PC から
福岡の PC のサーバーソフトウェアにリクエストを送信します。

補足 : 正確には福岡のオフィスで管理されている PC

このサイトがある PC はロリポップの福岡の事業所( GMO の北九州オフィス )で管理されています。
管理されている事務所の情報は登録されているので誰でも見れますが、
そこから別の場所に PC が置いてある可能性もあります。
福岡に PC があると確定しているわけではありません。

ただ、ここでは説明のため事業所のある
福岡県北九州市小倉北区京町 3-1-1 セントシティ
にサーバーの PC がある、という事にして進めていきます。

光ファイバーケーブルで繋がってる

もの凄く説明を飛ばしますが、リクエストはデータで、データは電気信号です。
今見ているこのページも元々はこのサイトのあるサーバーが電気信号でそちらに送ったものです。
この電気信号についてはここでは扱いません。そういうもんかと思ってください。

今回の話は
この電気信号は光ファイバーケーブルという物理的なケーブルを通って伝達されています、
ということです。

ニューヨークにあるマイクさんの PC とこのサイトが入っているサーバーの PC は
光ファイバーケーブルで物理的に繋がっていて、
このケーブルを伝ってデータを送受信しています。

ただ、一本のケーブルで直接つながってるわけではありません。
両社の間には大量の光ファイバーケーブルがあり、そのケーブルをルーターが繋いでいます。

そして終着地点のルーターから先が LAN、ルータを一歩出た先が WAN です。

海底ケーブル

そうはいっても、アメリカと日本の間には海があります。
なので光ファイバーケーブルは海の底にも這わせてあります。
この海に敷設されているケーブルを海底ケーブル、
あるいは海底通信ケーブルと呼びます。

実際に海底ケーブルの地図が見れるサイトが下記です。

2021年時点での海底ケーブルを視覚化したのが下記です。
この時点で世界中に 447本のケーブルが敷設されているそうです。

アメリカから日本へデータが届くのは海底に敷設された光ファイバーケーブルを通って
電気信号が届いているためです。

ニューヨークのマイクさんの PC と福岡のサーバーは物理的に繋がっています。

大手 IT 企業は海底ケーブルを持ってる

Google や Amazon、Microsoft、Meta は自社のインターネットワークの強化のため、海底ケーブルの建設を進めています。

特に Google、Amazon、Micorosoft の 3社はそれぞれ GCP、AWS、Azure
といったクラウドサービスを提供していて、
これらのサービスには世界中のデータセンター間での高速なデータ転送の仕組みが必要です。
Meta はメタバース構築のために同じ仕組みが必要です。

これまで海底ケーブルは通信事業者(テレコム会社)や
インターネットサービスプロバイダー(ISP : ソフトバンクや KDDI など)を中心としたコンソーシアムによって敷設されてきました。なんでソフトバンクにネット代払ってるかっていうと海底ケーブルや地上ケーブルを通してくれてるからです。(業務内容はそれだけではないです)

このコンソーシアムに Google や Amazon、Microsoft、Meta が参入しています。
要はこれまでの海底ケーブルの使い方だと
自社のサービスのニーズに応えられなくなってきたんですね。
そのため自ら出資して海底ケーブルを持つことで
自社のサービスの安定性と品質の向上を図っています。

出資者は上記の通りですが、じゃあどこが実際にケーブルを敷設してるかというと、
例えばそのひとつが KDDI ケーブルシップ株式会社です。
こういった海底ケーブルの敷設・保守の専門業者があって、そこの HP などを見るとどんな流れで作ってるのかわかったりします。

インターネットはサブネットが階層化したもの

ルーターはネットワークを構築しています。
ルーターが構築しているひとつのネットワークをサブネットと呼びます。

例えば日本のサブネットを考えてみます。
日本のサブネットの下には東京や大阪や福岡といったサブネットがあります。
東京の下には渋谷区や港区、渋谷区の下には原宿や表参道のサブネットが続きます。

そしてそれはアメリカも同じです。
国と国は海底ケーブルで繋がっていて、すべての LAN は最寄りのサブネットと繋がっています。
つまり、マイクさんの PC と福岡のサーバーを結ぶ光ファイバーケーブルは
下記のような経路で通ってます。

インターネットのネットワークはサブネットが階層化されて構成されています。
インターネットのネットは「網」を指し、
インターは「相互間」や「互いに」を意味する接頭辞です。
インターネットは「お互いの網」を指します。
サブネットは網を構成する小さな網の単位で、全体の網の中で特定の地域を形成しています。

LAN もサブネットのひとつです。一般的には末端のサブネットが LAN になります。
LAN のルーターよりも内側が LAN、ルーターを一歩出た先が WAN です。
ただ、社内ネットワークを利用して LAN の中に LAN を持つ企業もあります。

インターネットのルール、TCP/IP

インターネット通信は、TCP/IP プロトコルによって成り立っています。

プロトコルとはルールのことです。
我々は「 TCP/IP プロトコル 」と呼ばれるルールに沿ってネットワーク間の通信を行っており、
この TCP/IP プロトコルというルールを用いたネットワーク通信を一般的にインターネットと呼んでいます。

なぜルールが必要なのか

ネットワークとはモノとモノを相互に繋げて通信するシステムを指します。
全世界すべての人が Microsoft のソフトウェアを使って通信している場合、
ルールを考えることは基本的に不要です。Microsoft がルールを作ります。

ただ、現実ではそうはなっていません。
サーバーの OS は多くの場合 Linux です。
AWS や GCP、Azure などクラウドサービスも普及しています。
クライアントの OS も Mac の場合がありますし、
PS5 や iPhone などデバイスが違うこともあります。そうなると OS も違います。
また、Google Chrome や Safari、FireFox など使用される WEB ブラウザも様々です。
オンラインゲームや DropBox など、インターネットを利用したアプリケーションもあります。

すべてのデバイス、OS、アプリケーションで互いに通信するのための共通ルールが必要でした。
その共通のルールを提供している仕組みが TCP/IP です。

そして TCP/IP 通信のネットワークの基盤になっているのがサブネットです。
上記の赤い TCP/IP 通信はすべて光ファイバーケーブルを利用した
サブネットを通じて通信します。

TCP/IP は仕組みを提供してる

TCP/IPを「通信のルールを定義している」と表現すると
それが単に規則や指針を設けるものに聞こえるかもしれませんが、違います。
TCP/IP プロトコルはルールを指しますが
TCP/IP はそのルールに沿った通信手段そのものを指します。

つまり、実際にデータを送受信しているのは Google Chrome やサーバーではありません。
TCP/IP です。
TCP/IP は OS に組み込まれているプログラムで、
WEB ブラウザやサーバーなどのアプリケーションは
TCP/IP を利用してデータの送受信を行います。

TCP/IP という共通の仕組みを OS が持っていることで、
アプリケーション側で通信に関する仕組みを個別で用意する必要がなくなります。
そのため、すべてのアプリケーションは
TCP/IP のルールを把握する必要も守る必要もありません。依頼できればいいだけです。

また、このアプリケーションには Python や C言語などのプログラミング言語も含まれます。
あらゆるソフトウェアはインターネットで通信を行う際にTCP/IP に依頼して通信します。

無線接続も TCP/IP を利用する

インターネットのネットワーク構造はサブネットによって支えられています。
サブネットなしでのインターネット通信は、実質的に不可能です。

これは無線接続にも当てはまります。
Wi-Fi や 4G、5Gなどの無線通信技術は
端末周囲は無線ですが最終的に光ファイバーケーブルを介したインフラを利用して
サブネットにアクセスしています。

例外はスターリンクや ADSL を利用したインターネット通信。
ADSL は電話回線を利用して通信するため、直接的には光ファイバーケーブルを通りません。
スターリンクは衛星を経由するため、地上ケーブルの利用は限定的です。

しかし、これらの違いは「経路」だけです。
すべてのインターネット通信は TCP/IP を通じて行われています。
スターリンクであっても、経路こそ違いますがサブネットを利用して通信します。

ここからは無線によるインターネット接続の経路をみてみます。

海底ケーブルを切断するとどうなるん?

2023年3月、中国が中国 / 台湾間の海底ケーブルを切断した、というニュースがありました。

このとき切られたケーブルはここでお話しした海底ケーブルです。
先ほどの 読売新聞の画像と Submarine Cable Map で見るケーブルの場所が同じことがわかります。

例えば台湾本島と中国間の海底ケーブルを切断した場合、一般的な通信に壊滅的な影響が出ることはありません。
Submarine Cable Map の Asia Pacific Gateway (APG) を見るとわかりますが、
台湾から他の国へ何本もケーブルが敷設されています。
台湾本島と中国間のケーブルを切断したとしても他のケーブルを利用して通信が可能です。

ただ、この時ケーブルを切られた馬祖列島は違います。馬祖列島の通信インフラは 2本の海底ケーブルでしか繋がっていません。
中国はこの 2本のケーブルを両方切断したため、馬祖列島の住民に大規模な通信障害が発生しました。

このとき障害が発生するのは光ファイバーケーブルを利用した通信です。
例外として記載したスターリンクは光ファイバーケーブルとは違う経路を通るため影響を受けません。

そのため、例えば災害発生時のスターリンクへの期待が高まっています。

光ファイバーケーブルのインフラを無視できる点から、戦争にもスターリンクが使用されています。

Wi-Fi の接続

Wi-Fi 通信は Wi-Fi ルーターと端末間を無線で通信します。
Wi-Fi ルーターは LAN ケーブルで LAN のルーターと繋がっていることが一般的です。
そのため、ほぼ全ての部分の光ファイバーケーブルを通ってサーバーと通信しています。

無線になっている部分が短いため、ほかの無線通信と比べて安定した通信が可能です。
デメリットとしては通信可能範囲が短いため、部屋の中など限定的な範囲に限られる点です。

街中にある Wi-Fi は広範囲をカバーする目的で設置されています。
範囲を広げるために高出力で動作させたり、
複数のアクセスポイントを使用してカバー範囲を拡大させています。
最近家庭用にも出されているメッシュ Wi-Fi と同じようなものです。
(ほかにも方法があるので一概に同じとは言い切れません。)

公共のWi-Fiでは多くのユーザーが同時に接続していて、帯域幅が共有されています。
また、信号が長い距離を移動すると物理的な障害物や干渉を受けます。
そのため広範囲をカバーしているものの、上記の理由で通信速度が低下します。

4G / 5G の接続

4G や 5G、 LTE は端末とキャリアの基地局間を無線で通信します。
基地局は有線で WAN と繋がっているため、
そこから先は光ファイバーケーブルによる有線で通信します。

画像ではブルックリンにある基地局にアクセスしていますが、
例えばマイクさんがマンハッタンに移動した場合は自動的に
マンハッタンの最寄りの基地局への無線接続に切り替わります。

メリットは Wi-Fi よりも広範囲で無線接続が可能です。
デメリットは Wi-Fi よりも無線範囲が広いので不安定になることと、
契約しているキャリアの基地局がない場所で利用できないこと、
キャリアに対して利用料金が発生する点です。

下記は SoftBank のサービスエリアマップです。

これを見ると高い山や沖合、海外はサービス範囲外です。
4G / 5G はキャリアの基地局の通信範囲内で利用可能です。

スターリンクの接続

スターリンクはイーロンマスクの SpaceX によって開発された
衛星ベースのインターネットサービスです。
数千の小型衛星(スターリンク衛星)を地球の低軌道に打ち上げ、
それらの小型衛星を経由して WAN に接続します。

ユーザーはスターリンクの衛星受信アンテナ、
通称「ディッシュ」を設置することでサービスを利用できます。
無線とはいえアンテナが必要なため手での持ち運びには適しません。

いい感じのブログがあったので紹介しておきます。

ちなみにコストコで買えます。

スターリンクを利用したリクエストの流れとしては下記のようになります。

  1. ディッシュからスターリンク衛星へ無線でデータを送信
  2. ディッシュから最寄りの基地局(ゲートウェイステーション)へ無線で送信
  3. ゲートウェイステーションからサーバーまでを光ファイバーケーブルを伝って有線送信

レスポンスはこの逆。

つまり、4G と同じようにゲートウェイステーションと呼ばれる基地局があり、
スターリンク衛星とゲートウェイステーションを経由してサーバーと通信します。

また、2の部分でゲートウェイステーションが地球の裏側にある場合などは
複数のスターリンク衛星を経由します。

現在の技術において、もっとも広範囲の部分を無線で通信できるのがスターリンクです。
最大の特徴がクライアント側の通信インフラが不要な点で、
ディッシュさえあれば世界中のどこからでも WAN に接続できます。
例えば光ファイバーケーブルがなく、キャリアの基地局もない海上や航空機で WAN に接続できます。
また、キャリアに縛られないため国境などの制限を受けません。

ゲートウェイステーションは下記のようになっています。
おそらく想像されてるものより小さいと思います。

デメリットとしては、
・ディッシュの価格が高い
・天候の影響を受けやすい
・遅延が発生しやすい
などがあります。

また、衛星を大量に飛ばすため
天体観測やデブリ問題への影響など、環境に対する課題を持っています。

注意点として、スターリンクはクライアント側の通信インフラは無視できますが
サーバー側の通信インフラは必須です。
サーバーの PC に直接のアクセスをしていないため
インフラがダウンしているサーバーへはアクセスはできません。

例えば福岡の通信インフラが死んで通信ができなくなったとしても、
小倉北区内にゲートウェイステーションがあれば
外部からスターリンクを使うことで小倉北区内のサーバーへアクセスできます。

ただし、ゲートウェイステーションからサーバーまでのインフラも死んでいる場合や
そもそもゲートウェイステーションがない場合はスターリンクでもアクセスできません。

まとめ

インターネット通信は TCP/IP によって行われます。

この TCP/IP によって送られる電気信号はサブネットを通って送信先へと伝わります。

有線・無線を問わず、インターネットを利用する際は必ずこの仕組みを利用しています。

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